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令和6年度宇都宮市長選における立候補者への公開質問状

令和6年度宇都宮市長選における立候補者への公開質問状

すべての人の命

質問1 「地域で生活する全ての人(外国人も含む)」の命と暮らしを、支え、守っていきますか。

(現状)
〇現に生活している全ての人が、国籍や在留資格で差別されることなく、基本的人権と生存権(生命を維持できる最低限度の生活)は守られるような地域づくりが必要と考えます。
〇現在、制度や支援が届かず生命の危機に瀕している外国ルーツの人たちが栃木県(宇都宮市)で生活しています。たとえば、難民申請中の外国人の多くは、在留資格が「仮放免」となり、在留は認められているが就労は禁止されています。そのため収入もなく生活困窮となり「生きることも困難」になっています。さらに救済制度もなく、民間のフードバンクやNPO/NGO等の支援のみが頼りとなっています。
また、健康保険に加入できないので、「病気になっても病院へ行けず」生命の危機を感じながら苦しんでいます。
〇地域の中に、「制度の狭間」で孤立・孤独・困窮などの問題を抱えているが「支援を求められない人」が多数存在しています。地域で暮らしているにもかかわらず最低限度の人権や、基本的人権である生存権さえも認められず、勤労、福祉、医療、教育などから排除されていると言えます。

(課題)
〇その背景には、日本の難民認定率の圧倒的な低さがあります。諸外国と比較すると2023年度では、カナダ68.4%、イギリス61.5%、アメリカ58.5%、日本3.8%といった状況で「ほぼ認定されない」のが現実です。これはすでに、国連の国際人権規約委員会から、「難民を含む外国人の人権について、①厳しすぎる難民認定基準 ②入管収容施設の処遇改善 ③仮放免中の生活の処遇改善」等の勧告を受けています。
〇仮放免になったからといって基本的人権や生命までを失うものではありません。仮放免中の外国人に対する必要な支援として、自ら生活を維持するための就労活動の機会や救急医療などの検討が「難民条約を批准する」日本国政府に求められているのです。

(提案)
〇地域で生活する全ての人が、国籍、在留資格、年齢や性別、障害の有無などにより差別されることなく、誰もが「人」や「社会」とつながり、助け合い、働き、共に安心して暮らせる社会である「地域共生社会」の実現を目指していかなければなりません。
〇誰もが「働きやすい国」「生活しやすい国」になれば、海外からも選ばれ、日本で就労希望する外国人も増加していきます。それが、今後、少子高齢化による労働力不足を抱える日本の課題解消につながるのではないでしょうか。

重度障害者の防災・会議参加

質問2 行政等の会議に地域に暮らす重度障害などの当事者を入れますか。

質問3 災害時の重度障害者の避難について、暮らしと命を守るための当事者を入れた具体的な避難計画と避難訓練、および当事者を交えた会議を行いますか。

(現状と課題)
〇災害時の避難や避難中の暮らしについて、地域で暮らす私たち重度障害者はとても不安に思っています。2018年には宇都宮市、鹿沼市、日光市、栃木市、佐野市、足利市、那須烏山市など栃木県全域で大規模な同時多発の水害が起こっています。それらを想定した場合、私たち災害時要援護者(特に重度の身体障害者の)は、自宅での車いすへの移乗、防風雨の中の避難、避難所での生活、避難所でのヘルパーの確保等がどのように行われるのか全く分かりません。またこれまでそのような避難訓練も、アンケートも、会議も行われていません。実際に、私たちが住む地区(宇都宮市)の避難訓練に参加しても、車いすでの参加が想定されず、「見ていてください」と断られて参加できませんでした。
〇災害時要援護者リストに基づいて個別避難計画が策定されていると思いますが、「数年前に災害時要援護者リストに参加されるか」の質問用紙がありましたが、それ以降は更新の連絡もありません。実際に、13年前の東日本大震災では何の連絡もありませんでした。
〇在宅の障害者の中には、人工呼吸器で暮らす人や、一人暮らしでありながら24時間の介護(介助)が必要な全身性障害者もいます。また知的障害、精神障害、認知症の高齢者、難病や内部疾患の人もいます。福祉避難所を決めただけでは多様な障害特性がある人たちの暮らしと生命は守れないと思います。また、重度障害者には電気機器が必要になり停電時にどのように対応したら良いか不安です。

(提案・提言)
〇住民との防災訓練に、地域に暮らす重度障害者など災害時要援護者を交えた、現実的な防災訓練をおこなう必要があります。
〇災害発生時に、避難行動と、避難所での生活、避難所での介護・療養について、それぞれの体制整備を行う必要があります。
〇そのためには災害時要援護者リストの実際的な運用を小地域ごとに行い、地域住民、福祉施設、当事者(家族)ごとの「個別避難計画」の策定が必要です。
〇2021年5月にバリアフリー法が改正され、バリアフリー基準への適合義務の対象となる特別特定建築物に公立小中学校等が新たに位置付けられました。2023年4月以降に新築等される公立小中学校は対応が必要になりましたが、既存の公立小中学校の改修は行うのでしょうか? 災害時の避難場所には、公立小中学校が利用される場合が多いので、早急に既存の公立小中学校の改修が必要です。
〇平常時も災害時にも、地域で暮らす重度障害者には「行政等の会議」への参加の機会がありません。障害当事者の「代役」として障害者福祉関係者や、福祉施設の長など「福祉サービス提供者」が招集され、会議が開かれているのが実際なのではないでしょうか。
街に暮らす重度障害の当事者はたくさんいます。大枠の計画とともに個別具体的なカスタマイズ(合理的配慮)が障害者の暮らしと命には必要です。福祉関係者は、福祉サービスを提供する主体であって、「障害者の代弁」にはなりません。地域で暮らす障害者を行政等の会議に入れる必要があります。

医療的ケア児者

質問4 県内でも増えている「医療的ケア児・者」が、大人になってからも地域で暮らしていくために、短期入所(ショートステイ)や、グループホーム、居住住宅について、運営補助や家賃補助などの継続的な支援をしますか。

(現状と課題)
〇医療の進歩により、人工呼吸器や気管切開、経管栄養などの「医療的ケア」が必要な医療的ケア児が増えています。現在、栃木県内にはおよそ400人の医療的ケア児が在宅で暮らしています。2021年の医療的ケア児支援法の施行を受けて、栃木県内でも支援の体制が進んでいますが、すでに、18歳以上となっている人も増えています。
〇大人の体格をした子ども(医療的ケア者)を、親は抱えて介護をしています。いつか親は年を重ね、腰や膝が痛くなって介護が難しくなります。学校を卒業したあとは医療的ケア者が県内で通えるところも少なく、抱えて車いすへの移乗ができないと外出することもできず、家のベッドで過ごす時間が増えます。18歳以上の医療的ケア者の毎日を考えた場合、通って人と触れ合う機会があることと社会に参加していくことは大切です。
〇また、県内でも主介護者である母親が病気で倒れることもでてきています。親の介護負担軽減のため、短期入所は必要ですが、特に人工呼吸器装着者になると受け入れてくれるところがほとんどありません。それは、人の配置や、高いスキルの必要な人員確保に資金が必要だからです。
〇病院では小児慢性特定疾病や難病の対策として短期入所を行う病院に県から補助が出ています。ありがたいことですが、病院は生活の場ではありません。お風呂に入れることも少なく、ベッドの上でモニターをつけられて過ごすことがほとんどです。
命を守ってはもらえますが、本人としては生活介護のようにレクリエーションや日中の活動があったほうがストレス少なく滞在することができるでしょう。もし可能であれば、日中に預かりを行う福祉施設で、顔見知りの関係のあるスタッフが夜に泊り、地域ベースの泊りができれば、選択肢が広がりますが、現行の福祉施設の短期入所ではまったく採算が合いません。
〇同じ理由で、「医療的ケア者」が親から自立して暮らすグループホームや住宅も不足しています。施設は一杯で入所者は高齢化しています。大人になった医療的ケア者の自立と、親の介護負担軽減、本来親がやりたかった人生を取り戻す一助としても、地域の中で生活介護や短期入所、さらに暮らしの場であるグループホームや住宅の整備は喫緊の課題と考えています。
〇また、医療的ケア児・者はどの地域にも暮らしていますが、暮らしている地域によっては、利用できる社会資源がほとんどなく、あっても人工呼吸器装着者などの重症児・者に対応していないなど、地域間格差が顕著です。事業所がない、人材がいない、医療的ケア児が少ないため事業所を始めても経営的に成り立たないなどの要因が考えられますが、栃木県のどの地域でも暮らしていける施策を望みます。
(提案)
〇福祉施設が地域で行う生活介護(障害者のデイサービス)について、成人である医療的ケア者を受け入れるための福祉施設への支援が必要です。
〇医療的ケア児者の短期入所を地域の福祉施設等で行う支援策が必要です。
〇成人である医療的ケア者に対応できるグループホームや居住住宅について、運営補助や家賃補助などの継続的な支援が必要です。

病児保育

質問5 病児保育の拡充をしますか。少子化対策にも、「働き手不足」の企業にとっても必須です。

(現状と課題)
〇栃木県全体の1日あたりの病児保育受け入れ可能数は105人(うち宇都宮市は31人)です。対して、保育所の利用者数は栃木県全体で39,428人、宇都宮市10,902人です。病児保育がまったく足りず、働く母親・父親や、職場に負担が重くのしかかり、離職やハラスメント被害の原因にもなっています。企業でも働き手不足が深刻な中、自治体の病児保育の拡充が望まれます。
〇両親共働き世帯の場合、子供が病気になると父母のどちらかが職場を休んで看病しなくてはなりませんが、ほとんどは母親が休むことが多いです。これにより母親はパート、アルバイトなど非正規雇用が多くなり、将来の低年金化も必然です。また、年子(としご)などで第2子をもうけることは困難です。つまり、「子どもを産めば生むほど親の育児負担が増え、収入が減る構造」になっています。少子化対策のためには病児保育は必然であると思います。
〇さらに深刻なのはひとり親家庭で、この場合には育児そのものが困難です。母子家庭の場合にはキャリアや収入より「休みやすい職場」で選ぶことが多くなり、正規雇用は望めません。
〇家計とワンオペ育児の負担によって、ひとり親家庭の相対的貧困率44.5%という数字になっていると思います。

(提案)
〇中学校区ごとに病児保育ができる施設を増やすことを求めます。
〇実例として小山市、矢板市、那須塩原市などでは「子育て援助活動支援事業(ファミリーサポートセンター事業)」で体調不良の子どもを預かるサービスを実施しています(矢板市・那須塩原市は回復期の子どものみ)。「病児・緊急対応強化事業」の予算を使い、ファミリーサポートセンター事業等で病気の子どもを預かることを検討してほしいです。
〇上記のほかにも、低コストで運営できる「訪問型病児保育」など、先行するNPO、市民活動団体が行う事業を積極的に活用してほしいです。
〇父母の雇用主でもある産業界(企業)と連携して、「保育園利用者の10%」分の病児保育を目指す等、計画の上で目標値を決めた病児保育数を確保する必要があります。これは働きがい、ジェンダー平等の視点からもSDGsの目標となっています。

学校給食

質問6 小中学校の給食費を無償化しますか?

 「すべての子ども達に平等に、安全でおいしい給食を食べさせたい」これは住民誰もが願うことではないでしょうか。
 学校給食法では「給食は教育の一環」と位置付け、憲法26条では「義務教育は無償」としています。教科書代が無償であるのと同様に給食費も全額公費で負担するべきと考えます。
 現在、全国の自治体の約3割が学校給食を完全無償化しています。しかし栃木県では未だ完全無償化した自治体はなく、昨今の物価上昇を受け、保護者に食材費負担を増額する学校もありました。低所得世帯や多子世帯にとって給食費の家計負担は大きく、一部の家庭ではそれによって子ども達に必要な学びの機会を奪うこともあります。無償化することで保護者の経済的な負担軽減はもちろんのこと、教職員の給食費徴収の事務作業負担も削減され、公費による安定した収入で給食を提供できることで栄養士・調理員の働き方や職場環境の改善も期待できます。
 また、自治体の財政状況によって、子ども達の給食の質に差が出ている現状があります。小中学校の給食を完全無償化するには、その自治体の予算の1%で実現できます。国単位では、日本の全ての小中学校の給食無償化を国の予算の0.38%で実現できます。国・県・市で負担を分け合うことで財源確保は難しくないと思います。
 食べることは子どもの生存権、成長発達権につながる重要な行為。それをすべての子ども達に平等に保障するという上で、無償化は当然ことではないかと考えます。

質問7 国は「みどりの食料システム戦略」を掲げ、有機農業を推進する市町村(オーガニックビレッジ)に交付金を出していますが、このような制度を活用し、有機農産物を利用した学校給食(オーガニック給食)を推進しますか?

  2021年国は「みどりの食料システム戦略」を掲げ、国内の農地25%を有機農地にするとしています。意欲的に取り組む市町村(オーガニックビレッジ)には交付金を出し支援しています。全国で124の市町村がオーガニックビレッジ宣言を出し、県内では小山市、市貝町、塩谷町がすでに宣言しています。また栃木市、大田原市もそれに向けて取り組みを進めています。
 実際の事例として、千葉県いすみ市では、2017年には市内の学校給食を100%有機米にし、有機野菜も使用しています。有機米導入の際の通常米との差額は、市が負担しました。2023年までに有機農業に転換した農家は導入以前の30倍になっています。県内の小山市では交付金を活用し、有機米を全量適正価格で買い取り、学校給食に無償提供。有機米生産者を支援する仕組みにより、担い手を増やしています。今年度は全小中学校で33回有機米の日を予定しているといいます。
 学校給食を有機農産物を利用したオーガニック給食にすることは、非常に意義のあることと考えます。
1)子ども達の健全な成長のために 
 子どもの食物アレルギーは10年間で2倍に、発達障害児は26年間で68倍に急増しています。これらの要因として、殺虫剤や除草剤として使われる農薬による影響が懸念されています。しかし、有機食材を食べ続けることにより、有害成分の排出が可能という研究結果も出てきています。成長期の子どもの新陳代謝は激しく、細胞は毎日入れ替わっています。食べたものが子ども達の体をつくる。毎日食べる給食を、安心安全な食材で提供できます。
2)環境保全のために
 有機農業は農薬、化学肥料を使わないことで、水質汚染・土壌汚染を防ぎます。生物多様性を守ることになります。有機農業の水田が増えることで、絶滅の危機にあるコウノトリやトキが生息するようになりました。豊かな自然を次の世代に残していくことができます。
3)地域農業の振興と農家を守るために
 栃木県は学校給食において地産地消に熱心に取り組まれ、これにより地域農業の活性化につながっています。しかし農家の担い手不足や耕作放棄地の増加は、未だ深刻な状況といえます。オーガニックビレッジ宣言により交付金を活用し、農作物の適正価格買い上げや栽培技術指導の支援により農家を増やし、より農業を発展させることができます。  
 宇都宮市民のため、宇都宮の豊かな自然を守るため、オーガニックビレッジ宣言をし、オーガニック給食の実現に向けて取り組んでいただきたいと考えます。

自治体独自の困窮支援

質問8 生活保護以外の低所得者に、自治体として総合的な支援体制を作りますか。

(現状)
〇生活保護受給者以外の低所得世帯(低年金の高齢者・障害者、高齢女性の単身世帯、母子家庭等)では、近年の物価高騰により困窮している人が急増しています。国の生活保護制度が唯一の支援策ですが、物価高騰に対する緊急の支援施策は十分ではありません。
〇いっぽうの低年金の高齢者・障害者等は働いて収入を増やすことができず、生活保護基準すれすれの切り詰めた生活をしています。このような人たちが物価高でさらに困窮し、市民活動団体であるフードバンクに食品を求めて来所しています。また、生活保護を使わざるを得ない人も増加していると思います。

(課題)
〇自治体独自の低所得者への直接給付(現金・現物)がない。
〇年間12.4万トン(栃木県:2018)発生している食品ロスを、困窮化防止・支援に回すための「企業ー市民団体ー行政」間の連携がなく、自治体の施策もない。
〇現物給付と連動した社会福祉援助技術「ケースワーク」が、民間の社会福祉団体・市民活動団体と連携して行われていません。

(提案)
〇生活保護に至る前に困窮化予防のための現金・現物給付を自治体独自で行う必要があります。例えば、食品ロスの一部をフードバンク等に提供する協定(条例)を企業・NPO・行政の3者間で作り、費用負担も3者で分担するなどの方策が必要です。さらにフードパントリーなどの食品供給拠点を社会福祉士等を配置する民間団体(社会福祉法人、NPO法人等)と一緒に作ることで地域に根差した〝家族ケースワーク〟ができていくことにもなります。
〇こうした取り組みはSDGsの目標である環境負荷の軽減、貧困化防止、福祉の充実など複数の目標を達成するとともに、増え続ける生活困窮者を受けとめるだけで手一杯な生活保護行政にとっての新たな支援策になると思います。

質問9 生活保護制度についての情報提供・周知を「自治体の義務」として条例等に盛り込みますか。

(現状)
〇生活保護法など社会福祉制度の多くは申請主義です。これは個人からの「助けてほしいと申し出ること」(扶助の申請)が権利だからです。一方で自治体側では「申請しないから、生活保護制度について伝えなかった」ということも残念ながらあります。過去には窓口に来た希望者に対し、相談という名目で話を聞き「それは難しそうですね」「若いから働けるんじゃないの? がんばってみて」など、いわゆる「水際作戦」により生活保護の申請を断念させるやり方をとっていた自治体もありました。
〇いっぽうで生活困窮者などの利用希望者は、社会福祉制度についても生活保護の制度も知らない人がほとんどです。また、それらを知っている人(社会福祉士等)に相談することもできない状況にある場合も多いです。

(課題)
〇生活保護制度の「情報提供・周知の義務」が自治体にない。(周知は努力義務にとどまっています)ドイツやスウェーデン、韓国では自治体に情報提供・周知の義務があり、さらに自治体内の別の窓口で受けた生活保護の利用希望を担当課に通知する義務がある国もあります。
〇「生活保護の申請」や「利用の相談窓口」が自治体以外の民間にない。これにより自治体は、申請の決定者と制度の実施者が同一であることになり、「あまり言うと利用ができないのではないか」などの利用者側の心理的な萎縮が生じています。

(提案)
〇生活保護制度の情報提供・周知義務を自治体の条例等で定める必要があります。
〇自治体内の各窓口で生活保護の相談があった場合には、担当課への通報を義務化する必要があります。
〇民間の社会福祉団体や市民活動団体等の社会福祉士に、生活保護制度の「利用相談、利用促進の業務」を委託する必要があります。
〇これらの施策を自治体内で進めていくにあたって、一定数以上の社会福祉士を配置し、専門職化する必要があります。

質問10 生活保護や児童福祉担当部課の職員の50%以上は、社会福祉士の有資格者にしますか。また、その達成までの間の次善の策として、両担当部課の役職者(部長・課長・係長…等)の人は、社会福祉士の有資格者にしますか。

(現状と課題)
〇民間の社会福祉施設、事業所では重要な役職で社会福祉士の配置が義務付けられています。一方で生活保護行政など役所直営の社会福祉の部門ではその義務付けがありません。
〇その結果、社会福祉関連諸法の基礎的知識のない人や、社会福祉サービスについての基礎的な訓練を受けてきていない人が「受給の決定・解除」などの「措置」を行い、また「自立の助長」をおこなっている現状があります。
〇さらに、「具体的なお金の額(支給額)」を決める行為は、「受給(希望)者の人生を左右すること」でもあり、重大な決定権を持っているとも言えます。こうした重要な行為を行う場合には「専門性のない人が携ってはいけない」と考えます。
〇こうした状況は、民間社会福祉と比べて(人員配置の水準、判断基準、サービス水準等が)著しく不均衡であると思います。
〇生活保護や児童福祉は本人とともに家族ごとのケースワークが重要ですが、それらは豊富な知識と経験に基づいてできる専門性の高い援助技術です。自治体行政の中で専門性を持った人を意識的に、かつ計画的に育てる必要があります。

フリースクール

質問11 不登校という社会問題に対して、フリースクールなどの「学校外の学び場・居場所」への継続的な補助金(助成金)を出しますか。

(現状と課題)
〇2024年に文部科学省が出した「OCOLOプラン」は、学校と民間との連携や学校以外の場の重要性がうたわれています。また教育機会確保法でもフリースクールを居場所・教育機関として位置づけています。
〇栃木県における2022年度の不登校児童生徒数は小・中学校合計で5,137人。宇都宮市の市立小・中学校における不登校の児童生徒数は2021年度で1,126人。9年連続で増加しています。
〇北関東の群馬県、茨城県ではフリースクールへの補助金、助成金を出しています(群馬県、茨城県ともに上限100万円)。基礎自治体でも茨城県つくば市、北海道札幌市、滋賀県近江八幡市、長野県飯田市などはフリースクールへの補助・助成を出しています。しかし、栃木県(宇都宮市)では不登校という社会問題に対し、フリースクールや家庭等への補助・助成金を出していません。
〇フリースクールの運営は利用者(家庭)からの個人負担で賄われていることが多く、一般的な月謝(月会費)の額は33,000円といわれています。NPO法人全国フリースクールネットワークが調査、編集した『フリースクール白書2022』(以下、白書)では、月会費30,001円以上のフリースクールが31.1%、20,001円〜30,000円は23.3%となっています。毎月3.3万円で計算すると年間39万6000円もの家計負担となっています。
〇また『白書』の保護者へのアンケートで「フリースクールに改善してほしいこと」の回答で最も多かったのが「会費を下げてほしい」25.6%、次いで「通うための奨学金がほしい」18.9%でした(回答者数285人:複数回答)。
また「行政への要望」で最も多かったのが、「フリースクールにお金を出してほしい」83.0%、「学校に行くのを当たり前と考えないでほしい」69.6%でした。
「保護者にとって子どもがフリースクールに通ってよかったか」という質問には「よかった」が89.5%と最も多く、これらのことからフリースクールの必要性やその利用料について行政(自治体)の補助・助成を求めていることがわかります。
〇いっぽうで公立学校に通う義務教育期間の児童・生徒は、年間一人当たり、小学生84万8000円、中学生は一人当たり97万9,000円の学校教育予算が支出されています(財務省HP)。公立学校に行かないだけで公的な教育支出がなされないのは、著しく公平を欠いています。フリースクールに通う児童・生徒にも同額の公的負担が支払われるべきでしょう。
またこれは「こども基本法」における「平等に教育を受ける権利」を侵害しているともいえます。

(提案)
○義務教育でかかる年間一人当たりの費用(80万~90万円/年)と同等の額の支出を、不登校の本人(家族)やフリースクール等にかける必要があります。
○補助・助成の方法としては、
①信州型フリースクール認証制度のように、行政(民間、保護者、子どもとの対話の上)でフリースクールの要件を決め、認証されたところに補助(助成)を行う。
②東京都のように、不登校家庭に毎月数万円の補助(助成)を行う
③茨城県つくば市のように、フリースクールとそれを利用する家庭それぞれに毎月補助(助成)を行う。
④茨城県や群馬県のように、上限を決めフリースクールへ補助(助成)を行う。
があります。
○不登校という社会問題について、フリースクールなどを主とする学校外の学び場・居場所に対する補助金(助成金)を出すか回答をお願いします。

子ども基本条例

質問12 「こども基本条例」を策定しますか?

(こどもに関する施策の理念の転換)
国はこども施策を社会全体で総合的かつ強力に実施していくための包括的な基本法として、日本国憲法、子どもの権利条約に則り「こども基本法」を制定しました。(2023年4月施行)
そしてこども施策を決める上で大切にすることを6つ挙げています。
① すべてのこどもは大切にされ、基本的な人権が守られ、差別されないこと。(差別の禁止)
② すべてのこどもは、大事に育てられ、生活が守られ、愛され、保護される権利が守られ、平等に教育を受けられること。(子どもの生命・生存及び発達の権利)
③ 年齢や発達の程度により、自分に直接関係することに意見を言えたり、社会のさまざまな活動に参加できること。(子どもの参加する権利)
④ 年齢や発達の程度に応じて、意見が尊重され 、こども の 今とこ れ か ら に とって最もよいことが優先して考えられること。(子どもの最善の利益・子どもの意見の尊重)
⑤ 子育ては家庭を基本としながら、そのサポートが十分に行われ、家庭で育つことが難しいこどもも、家庭と同様の環境が確保されること。
⑥ 家庭や子育てに夢を持ち、喜びを感じられる社会をつくること。
これらはこれまでの子どもに関する施策の理念から大きく転換し、子どもは「大人から守られる存在」という考え方から、それだけではなくて、子どもも「ひとりの人間として人権(権利)をもっている」、つまり、「権利の主体」であるという考え方から出発しています。
政策転換の理由については、子どもを取り巻く日本の現状の深刻さにあります。
●いじめの重大事態件数や小・中学校における不登校のこどもの数が過去最多(令和4年度児童徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査)
●10代の死因の最多は自殺(令和4年人口動態調査)
● 児童虐待の相談対応件数が過去最多(令和5年度全国児童福祉主管課長・児童相談所長会議資料)
● 相対的貧困の状態にあるこどもの割合は11.5%、特にひとり親家庭は44.5%と高い(令和4年国民生活基礎調査)
●諸外国に比べてこどもの自己肯定感や幸福感は低い(令和元年我が国と諸外国の若者の意識に関する調査及び国連児童基金の調査)
●2022年の出生数は統計開始以来、最少の数字となり、合計特殊出生率は過去最低(令和4年人口動態調査)
これらの社会課題を解決するための、「こども観」と「子ども政策」の大転換として「こども基本法」があり、2024年には「こども大綱」も閣議決定されました。担当大臣は子どもたちへ「おとなが中心となってつくってきたこの社会を『こどもまんなか社会』につくりかえていく」と宣言しています。

(栃木県の現状)
県、市、町で条例づくりをする意味は、①子ども施策推進体制が整備される。②子ども参加・子どもの意見表明の推進。子ども権利施策の具現化といった条例に基づく具体的な事業の展開、③子どもや住民への子どもの権利学習の推進、子どもの権利に関する意識啓発・理解が促進される。④条例に基づく子どもの権利委員会、推進委員会などによる評価・検証システムの構築があげられます。

栃木県の子どもに関する条例では、子ども・子育て支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、「とちぎの子ども・子育て支援条例」(2019年)がありますが、当時の子ども・子育て支援法に基づくもので、「大人が子どもを育てるための条件整備の条例」であり、もちろん「こどもまんなか」でもありません。
 また、栃木県では、こども基本法にある「栃木県こども計画(仮)」を策定中ですが、本来は、栃木県版の「子ども基本条例」を新たに策定したうえで、「栃木県こども計画」が作られるべきと考えます。後述しますが、こども基本法の理念が「栃木の子ども一人ひとりに伝わること」が意味のあることだからです。「条例づくりを子どもと一緒にやること」が重要です。(なお、「こども計画」づくりも子ども参加が必要です)
自治体の条例の策定状況は、全国では2024年3月現在で69の自治体にのぼります。これらには理念だけの条例は含まれず、「子どもの権利保障を総合的にとらえ理念、制度、しくみ、施策などが相互に補完しあうような内容を備えた」条例を数えたものです。栃木県内では25市町のうち2市(日光市:子どもの権利に関する条例(2013)と那須塩原市:子どもの権利条例(2014)です。(『子どもの権利保障を図る総合的な条例一覧』子どもの権利条約総合研究所参照)
宇都宮市では「宮っ子を守り・育てる都市宣言」(2024年2月)が制定されましたが、当事者である子どもをはじめ、子ども支援に関わる大人たち、さらには一般市民への認知は低調です。宣言ではなく、先述した「子どもの権利保障を総合的にとらえ理念、制度、しくみ、施策などが相互に補完しあうような内容を備えた」こども基本条例の策定が必要であると考えます。
子どもに関する施策を策定する基盤となる条例は、子どもにとって、より身近な市町で策定されることが望ましいと思いますが、県の条例策定が、市町での条例策定の後押しになることから、ぜひ栃木県が先陣を切って、こども基本法に基づく「こども基本条例」を策定していただきたいと思うのです。

(提案)
〇「こども基本法」が施行された今、「とちぎの子ども・子育て支援条例」の全面的な見直し(改廃)を行い、「こども基本法」の理念に基づいた栃木県の「こども基本条例」の策定を提案します。そのうえで「栃木県こども計画」を策定する必要があると考えます。
○また、こども基本法が施行されても、それだけでは当事者である子どもたちには届きません。栃木の子どもたちと条例を一緒につくることで、子どもたちにこの基本法の考えを届け、「こどもまんなか社会」を実感してもらいたいと思います。
例えば中野区は、条例制定を見据えた審議を進めていくことと並行して、可能な限り「子どもの意見」に耳を傾けるために「出前授業」や「意見徴収」を積極的に行いました。また条例の内容を想定した質問を用意し「ワークショップ」や「アンケート調査」、Webで公開し意見を聴取するなどで、たくさんの子どもの意見を集めました。子どもたちの生の声は大人の想像を超えて、子どもの現状を浮き彫りにし、条例に盛り込まれる事例もありました。また区民に広く子どもの権利を知ってもらうために普及啓発事業も行いました。企画展示をはじめ子どもの権利をテーマにした区長と区民によるタウンミーティングを行い、区民の理解も得るよう努めたそうです。このように「子どもの意見をどのように条例に反映させていくか?」「子どもと一緒につくるとはどういうことなのか」を先進地に学びながら栃木県らしいこども基本条例を策定したいと考えます。
〇国は、こども基本法やこども大綱に則って、こどもに関する施策の指針を新しく策定又は現行の運営指針の改定をしています。特に「こどもの居場所」については、「こどもは家庭を基盤とし、地域や学校など様々な場所において、安全・安心な環境の下、様々なおとなや同年齢・異年齢のこども同士との関わりの中で成長する存在であるが、社会構造や経済構造の変化により、こども・若者が居場所を持つことが難しくなっている現状にある。喫緊の課題や個別のニーズにきめ細かに対応した居場所をつくることで、こどもの権利を守り、誰一人取り残さず、抜け落ちることのない支援を行う必要がある。」として「こどもの居場所づくりに関する指針」を策定しました。
栃木県でもこの指針に基づいて、多様な居場所づくりを推進していただきたいです。また、この指針に書かれている居場所とは児童館をはじめ、プレーパーク(冒険遊び場)、子ども食堂、フリースペース等、放課後児童クラブ、放課後等デイサービスなど既存のものも含まれます。これらの施設や事業がこの指針に基づいて運営されているかどうか評価するとともに、早急に質、量ともに見直す必要があると考えます。

自然保育認証

質問13 自然保育認証制度を取り入れますか?

(意義・現状)
幼児期の自然体験は、自己肯定感や自立性・協調性など数値化できない「非認知能力」を育む効果が認められています。
全国では、50年前の子どもがそうであったように野原や森で子どもが自由に遊ぶ「森のようちえん」など、自然体験を保育に積極的に取り組んでいる市民活動団体や幼稚園・保育園も増えてきました。(「森のようちえん全国ネットワーク」に登録されている団体数は約300か所、栃木県は3か所。参考:群馬6、茨城5)
この動きに対応して、自然体験を保育に取り組む幼児教育の場を認証する「自然保育認証制度」を制定する自治体も増えてきました。鳥取県、長野県、広島県などがすでに自然保育認証制度に取り組み、例えば長野県では298か所が認証されています。

(提案・提言)
認証制度を作ることは、様々な保育施設が前向きに自然体験を保育に取り入れることにつながります。それは、栃木県の豊かな自然を生かしながら「栃木っ子」の健やかな心身を育んでいく土台になります。
また自然を生かした保育を推進することで、首都圏の子育て世代の移住場所として選択される効果があると考えています。

児童館

質問14 児童館の設置を推進しますか?

(児童館の必要性)
〇児童館は児童福祉法第40条に規定された児童厚生施設で、18歳未満の子どもが利用することができる児童福祉施設です。
専門の職員(児童厚生員)が配置され、遊びを通じた子どもの最善の福祉の増進が安全性の確保と同時に提供されます。なかでも児童館の最大の特色は、児童が「自由に使うことができる」「居場所である」という点にあります。
加えて利用について保護者の就労の有無などの要件が不問である点、特定の利用対象者が想定されない点、18歳未満のこどもについて利用がオープンである点、こども自身が徒歩や自転車、公共交通機関など自力でアクセスできるような日常生活圏に立地している点など、こどもの権利を保障する「こども基本法」の実践の場としてふさわしい位置づけにあると考えます。

(現状と課題)
〇いっぽうで、放課後児童クラブ(学童保育)は利用に関して要件があり、利用対象者は限定的で、保護者の事情が優先され、子どもの意思で自由に利用できる施設としては位置づけられていません。
〇また人口減少社会における地域の児童公園については、安全領域とは言えず、遊び場として脆弱で児童の安全性は確保されない状況です。

(提案)
〇宇都宮市内の児童館は、大規模な児童館を含めて市内5拠点があり、うち3拠点は旧河内町立という状況です。地域的に偏在しており、また児童が自分の足で行ける距離ではありません。宇都宮市内に、子どもが自分で行ける範囲(中学校区など)に児童館の設置が必要です。
〇また、児童館という「建物」を想定するだけでなく、プレイパーク(冒険遊び場)や「森のようちえん」など、児童館の趣旨を体現する施設や市民活動を児童館とみなし、推進することが必要です。

協働

質問15 住民・市民の自治力を向上する視点で「行政とNPOの協働」を推進しますか。

(現状と課題)
〇1995年の阪神淡路大震災でのボランティアの活躍を契機に、1998年に議員立法で「特定非営利活動促進法(NPO法)」が成立しました。その後、全国的に「自治体とNPOとの協働」の取り組みがなされ、自治体による条例づくりや「NPO支援センター」を通じての支援、NPOへの委託(補助)事業の拡大が全国各地で推進されてきました。
〇現在、栃木県には600余りのNPO法人があります。NPO法人を含めたNPO等、市民活動団体の特長は、①ボランティア等による市民(住民)参加による運営、②会費や寄付、自主事業、委託事業による多様な財源での運営、③行政も企業も解決できていない社会問題について「先駆性」「即応性」「柔軟性」「創意工夫」によって、「多様な問題解決の手法」を開発しながら、実施していることです。
一方で弱点は、①財政基盤が弱い、②後継者がいない、③人のつながりによる活動であり、お金による規模の拡大ができにくい、などがあります。

(課題)
〇協働は本来、「行政とNPO、それぞれの特長を生かす仕事のしかた」ですが、現在のNPOや市民活動団体全般の「行政との協働」は、(指定管理も含めた)委託事業がほとんどであり、自治体事業の下請けのような位置づけになっています。
〇「先駆性」や地元に根差す「市民性」と「参加性」がNPOの最大の長所ですが、委託事業や指定管理の入札等による事業者選定は「費用対効果」が優先され、地元に根差す住民・市民の力を活かしていくという視点は蔑ろにされています。これは、自治体が住民・市民の自治能力の向上を図っていくという姿勢ではありません。
〇委託事業等の業者選定の場合、地元以外でも実績があれば「実施能力がある」とされ、全国組織のようなNPO法人等に委託される場合も多くなっています。業者の選定基準(入札の条件)などに、「地元を育てる視点」や、「地元での実績」を評価する項目がないことが理由と考えます。
〇行政だけでは解決できない課題も沢山あります。必然的に地元に根差したNPOなどの市民活動団体との協働が必要です。
例えば、子ども・子育て分野では、ひとり親家庭や、貧困・育児放棄、精神疾患や発達障害のある親や子どもを持つ家庭など、多様な子育て世帯のニーズに、行政のみで応えていくことは難しく、既存の行政窓口や施策のみでは必要な支援につながらない世帯が存在します。 そのためにも、多様な社会課題に対する臨機応変な機動力や、地域における地元の支援連携ネットワークをもつNPO法人等の活用が望まれています。

(提案)
〇住みやすく、子育てしやすい社会を実現していくためには、さらなる「行政とNPOの協働」や、民間と行政が連携していく仕組みが重要と考えます。地元に根付き、活動を積み重ねている「NPOの実践活動の手法」を、積極的に活用する必要があります。
〇委託や指定管理等の業者選定においては、地元(市町域、または県域)に根差した活動実績を評価し、「地元の市民活動を育て、自治力を向上させる視点」で、地元NPOを優遇するような選定基準の改善を提案します。
〇一時的な費用対効果よりも、地域に根差した活動を効果的に持続していくために、地元のNPO等、市民活動団体を強くしていく努力が必要です。
〇例えば無数にある「子ども食堂」などは、NPO単体では力量がない場合でも、NPOのネットワークや、NPOのコンソーシアム、またはNPOの中間支援団体に委託を行うなど、小規模の団体間の相互ネットワークの活用によるさらなる活性化が、今後の地域の課題解決のモデルになると思います。